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憲法解釈について

2021/03/10

 

近時、憲法解釈のあり方について、
近代法の大原則に異を唱えるような解釈が
提唱されることがあります。

と、書き始めると、
小難しい話だと思われるかもしれませんが、
そんなことありません。
気楽に読み流してください。

気楽に読んでもらうために、ここでクイズです。
質問:憲法の目的はなんですか?
ア:国家機関が自由に活動できるようにする。
イ:国民の権利や自由を護る。
ゥ:崇高な理念を掲げて他国から尊敬される。

答えは、

イです。

憲法は、まさしく、国民ひとりひとりの生命、
財産、自由、平和等を護るための法です。
言い方を換えると、
国民の尊厳を確保するための法だと言うことができます。
こうやってみると、難しくはないですよね。

では、続いて第二問。
質問:憲法を読むと、国会だとか、内閣や、司法、
あるいは地方自治のあり方も書いてあります。
それらはなんのために書いてある(規定された)のですか。

ア:国家がいったん手にした権力を維持するため
イ:統治のあり方もの定めも、国民の尊厳の確保に勝るとも劣らず大切なことなので、それを明らかにするため。
ウ:統治機構の定めも、全ては国民の尊厳を護るための手段であることを確認し、それゆえに、国民の尊厳を護ることに繋がらない憲法改正をしてはならないことを確認するため。

答え

アとイは間違いです。

憲法の条項は、全て個人の尊厳(国民の生命、財産、自由など)を
確保するためにあります。
一見、個人の尊厳とは関係なさげに見える、統治機構に関する条項も、
個人の尊厳を確保するために解釈されなければならないのです。
もちろん、憲法改正の条項も同じです。

ですから、正解はウです。

こうやってみると、
憲法の考え方を理解することは
決して難しいものではないことが分かります。

怪しげな評論家より、
国民ひとりひとりの方が
ずっと深く理解することができるのです。

憲法9条改正の議論でも、
純粋に憲法解釈の観点から見ると、

国民ひとりひとりが平和に暮らすためには
9条を手直しした方がいいのか、
それとも今のままの方がいいのか、
という視点で見ることができます。
実際は、政治的要因が入っているため議論が
複雑になりますが根本は変わりません。

なお、権力は自己増殖を図り、
最後は腐敗するという性質を持っています。
そのため、近代憲法は、国家権力をどうやって押さえ込むか、
といことに主眼をおいて定められました。

猛獣の檻を作るような感覚です。
この事を前提としない憲法解釈は成り立ちません。
政府が憲法改正を言い出すがごとき事態は、
檻に閉じ込められた猛獣が「俺は安全だから、
檻をすぐ壊れる弱いものにしろ!」と脅しているようなのもです。
人類の歴史と文明を共有してきた私たちとしては、
慎重にならざるを得ません。

ともあれ、憲法改正の話題が出たら、
上記のことを思い出してみてください。

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